2011/09/12

超過勤務




地図を片手に電気工は
あるはずの現場はからっぽで
探し歩く街路は
進むほどに入組んで
頭上を掠めるように這う月は
弱々しく赤い光を放つばかりで
ポーカーフェースの窓まどは
目を閉じたままクスリともしないで
クリップボードを投げ捨てた電気工は
水玉シャツの胸ポッケトにボールペンを仕舞って
歩き続ける


※これはフィクションです。実在の人物団体場所とは一切関係ありません。