2012/02/27

屋上少年 末井君

 

 

その日は晴れてて
バイバイ バーン
デパートの屋上で
父ちゃん手を振り払った。

家に帰ろうにも
どこがどっちだか
屋上から山々
どこも同じに見えた。

屋上からどこにも
行き場がなくて
どうしようもなくて
そこに住着いた。

じいさんばあさんを
椅子に座らせて
チップをもらったり
屋上の屋台の呼込みをしたりした。

そのうち屋上に来る
人達が顔を覚えてくれて
そのうちみんなの
顔を覚えたりした。

夜は街灯りで
赤黒い空の中の
数少ない星を数えながら
屋上で眠りについた。

誰も屋上から
追い出したりする事もなく
運が良いんだと
思ったりした。

そんな生活が何年か経って
昔の事も思い出さなくなって
この屋上がボクの家だったんだと
気がついた。


※これはフィクションです。実在の人物団体場所とは一切関係ありません。

2012/02/21

幻の世界

 

どうやったら 行けるのかな。
幻の世界 世界地図
大洋と島々 入組んだ海岸線
大陸と湖 交易路と未踏の地
世界地図 一壁一壁巡る
学校の帰り道。


※これはフィクションです。実在の人物団体場所とは一切関係ありません。

2012/02/16

止まれ! 進め! そして吠えろ!

 

止まれ! いや進め!
続けろ! いや終れ!

ここから先へ 入るな!
いいや! 飛び込め!
暴れろ!
そして 叫べ!

俺は キケンだ!
そして 生きてる!
まだ 生きている!

枕木を踏砕いて
岩山を突貫して
大洋を切裂いて
そうだ 雷になって
突き進め!


※これはフィクションです。実在の人物団体場所とは一切関係ありません。

2012/02/01

怪物

 


雪深い山奥の
集落から離れた薄暗い林の中の
一軒家に、その怪物は住んでいた。

怪物の世話をしていた
おじいとおかあが、ひと冬の間に相次いで死んでしまった。

食べ物が無くなってひもじくなった怪物は
生まれて初めて家を出た。

怪物は驚くほど冷めた空気に興奮して
毛を逆立てながら山を下り
たまたまやってきたローカル線の電車に転がり込んだ。

さて、街に出た怪物は
どんな女の子と出会って
どんな不思議な経験を積んでいくんだろうね。

続きは明日の晩、話してあげよう。
さあ、おやすみ…


※これはフィクションです。実在の人物団体場所とは一切関係ありません。