2012/02/27

屋上少年 末井君

 

 

その日は晴れてて
バイバイ バーン
デパートの屋上で
父ちゃん手を振り払った。

家に帰ろうにも
どこがどっちだか
屋上から山々
どこも同じに見えた。

屋上からどこにも
行き場がなくて
どうしようもなくて
そこに住着いた。

じいさんばあさんを
椅子に座らせて
チップをもらったり
屋上の屋台の呼込みをしたりした。

そのうち屋上に来る
人達が顔を覚えてくれて
そのうちみんなの
顔を覚えたりした。

夜は街灯りで
赤黒い空の中の
数少ない星を数えながら
屋上で眠りについた。

誰も屋上から
追い出したりする事もなく
運が良いんだと
思ったりした。

そんな生活が何年か経って
昔の事も思い出さなくなって
この屋上がボクの家だったんだと
気がついた。


※これはフィクションです。実在の人物団体場所とは一切関係ありません。